kagishippogizashippo’s blog

空の色を映して流れていく雲と風

夏の瞳

きみの瞳に降り注ぎ

きみの体に降り注ぎ

青く 蒼く ただ、どこまでも遠くまで続くこの空に

 

ただ時折通り過ぎてゆく小さな影に

まばたきだけ

 

鳥が鳴き

突然の雷鳴に きみはゆるやかに

思う存分 その手足を自由に伸ばす

 

慌てて閉めた窓に叩きつける雨粒に

きみの耳は退屈そうに一回ゆれるだけ

 

夏がその姿を変えても、

きみはきっと変わらない。

 

小さく

 

にゃ

 

と鳴いて、尻尾を優雅に動かす姿。

夏から秋に変わる時、きみの瞳に最初に映る景色は、

どれほど美しいのだろう?

 

 

きみにとってはあたりまえの景色なのだろうけれど。

空の高さ

井の中に

蛙を落としたのはナニモノだろう

 

井の中で

蛙は見上げる

ひび割れたように眩しい空を

 

「オマエ は ウミ を 見たたことなどナイダロウ」

 

木枯らしよりも

カラカラと

憐れな音を立てて ナニモノか達は

井の中の蛙を見ては 嗤う

 

蛙は上を見上げ続けている

 

あの空まで手を伸ばして

高く 高く 高く

跳び上がる事だけを考えて

 

井の中を覗くことしかできない

ナニモノにもなれない ナニカ が

空を見ることができない姿を

憐れと思いながら

 

下しか見ない

見えない オマエ達は楽しいだろうか

 

蛙は跳ぶ

 

 

高い高い あの 空を目指して

春の聲

真綿の原

 

軽やかに

 

まだ眠る 木々 花の芽 

寒い寒い凍てつく冬に逆らわず

春の陽を 風を 光を待ちながら

 

もうすぐ春だよ

 

真綿の原

 

先に咲くは

無邪気な仔犬の歓びの歌

はずむように 描かれた

花のような足跡

音階が咲き乱れる

春を呼ぶ楽譜のよう

 

 

雪がしんと広がる大地

 

真っ先に春を知らせたかった

香りを放つ 梅の花

薄く蕾を揺らして微笑う

 

ほら、

春が来る

 

仔犬の音符は自由に舞う

 

足跡は 地に咲く六花

春を呼ぶ

 

やわらかな陽射し

風も 空も

地に咲く六花に微睡みながら

 

春が来るよ

もうすぐだよ

 

楽しいよ

 

さあ、目をあけて

 

春がそこにいるよ

 

新しい春を運ぶ花はやがて色をつけ

それぞれに美しく

上を向いて誇らしく

春を知らせるだろう

 

冬  音もなく ながれて

薄氷を幾重にも重ねたように危うく張り詰めた夜空。

 

銀色にやわらぐ六花が降りてくる。

 

ふわり ふわり

 

斬りつけるような冷たさを

夜空のどこに置いてきたのか。

 

 

髪に、肩に、頬に

 

六花は、輪郭を失いながら

この身に染み入るように

冬の形を溶かしてゆく。

 

やわらかな春を夢見るように、

白く輝く月が映す夜空に帰る星のように、

 

 

六花 舞う。

 

 

 

 

 

冬に六花 舞い上がり舞い散る

分厚く透明な 氷の窓が 寒々と

数多の景色を囲むような 夜。

 

 

銀色の月が、ぽかりと浮かぶ

深闇の中。

しゃらしゃらと降るのは、氷の窓を削り、月明かりを纏った六花。

ひとつとして同じ形のない冬の花

 

肩に落ちて儚く消えていくその月灯の結晶を、ただぼんやりと見つめる。

上を見上げると、まるで夜空に吸い込まれていくようで。

六花が降る 降る。

一陣の風に軽やかやに舞う。

身体ごと、一緒に六花と空に帰ってしまいそうな。

不思議な景色。

 

髪に、肩に、てのひらに。

 

真綿を包むは月の光。

 

こんなに美しい 白

 

いっそ、六花に埋もれて、春に誰かを癒すような、白い花に生まれかわれたのなら…

 

空の歌 秋の声

細かくちぎれてゆく雲が、

まるで空に描かれた五線譜のような電線に、きままな音階を刻んでゆく。

 

風が歌う。

 

雲が次々と五線譜を滑り、あるいはとどまり、そして新しい空の音を紡いでゆく。

 

透明に高く、かぎりなく高く広がる空は、いつまでも歌う。

空の声が聞こえる。

 

そんな初冬のひやりと頬を撫でてゆく心地に、空を走る音を見上げながら

ゆっくりと瞳を閉じる。

 

空が囁く。

もう秋だよ。

 

風が歌う。

もうすぐ冬だよ。

 

どこまでも終わらない新譜に心を委ね

 

今年初めての雪虫がふわりと踊っている。

 

昔、

海の色は空の色を映しているから

青いんだよ

と、誰かが教えてくれた。

 

海が揺れる

白く波を吐き出す

 

自分で触れる空

 

白い波は重くて

手で触ると 透明な水になる。

 

わたしの色を海の鏡は映さない。

濃い青が揺れる

私の輪郭がそこにあるようで。

 

海の色と空の色。

 

本当の鏡はどちらなんだろう

 

遠くてわたしが抱けない

 

青い 青い 鏡

 

海に姿を映した空に

白い雲がゆらゆらと 波のように揺れて流れていく。

 

わたしに映るのは、

白い雲の波の影

 

流れていく

流れていく